映画『騙し絵の牙』 ネタバレ感想 社内政争を舞台にした速水の策略の数々。最後に笑うのは誰か?

映画

こんにちは。サンチョです!

今回は大泉洋さん主演の映画、『騙し絵の牙』を観てきました。

元々、原作が大泉洋さんをイメージしてあてがきされたモノと知っていたので、大泉洋さんが好きな私としては楽しみにしていた作品です。

最初はそれこそ『新解釈 三國志』のような「まんま大泉洋」の映画なのかなと思っていたのですが、「良い意味」で主人公を大泉洋さんのイメージから外しており、吉田大八監督の描く速水輝が見れて大変満足しました!

この記事は『騙し絵の牙』のネタバレが含まれます。
未鑑賞の方はお気をつけ下さい。

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『騙し絵の牙』 基本情報

原作は『罪の声』などのベストセラーを生みだした塩田武士さんが大泉洋さんを主人公にあてがきした作品。
「2018年本屋大賞」では6位に入賞したベストセラー小説。

あらすじ

引用) YouTube 松竹チャンネルより

大手出版社「薫風社」に激震走る!かねてからの出版不況に加えて創業一族の社長が急逝、次期社長を巡って権力争いが勃発。専務・東松(佐藤浩市)が進める大改革で、お荷物雑誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水(大泉洋)は、無理難題を押し付けられ廃刊のピンチに立たされる…。 速水は、新人編集者・高野(松岡茉優)と共に、イケメン作家、大御所作家、人気モデルを軽妙なトークで口説きながら、ライバル誌、同僚、会社上層部など次々と現れるクセモノたちとスリリングな攻防を繰り広げていく。嘘、裏切り、リーク、告発――クセモノたちの陰謀が渦巻く中、速水の生き残りをかけた“大逆転”の奇策とは!?

引用:映画『騙し絵の牙』公式サイトより

原作 – 塩田武士『騙し絵の牙』

STAFF/CAST

CAST

主演はあてがきの通り大泉洋さん。「天性の人たらし」という納得がいく配役です。
昨年度末に『新解釈 三國志』で主演を務めた他、今年の末に公開予定の映画『浅草キッド』でも主演と目まぐるしい活躍ですね。

もう一人のメインキャラ、編集者・高野恵役を演じられたのは松岡茉優さん。
吉田大八監督の作品には『桐島、部活やめるってよ』に出演しています。

また個人的に注目していたのは速水の部下である柴崎を演じた我が家の坪倉さんです。
ドラマでは何度かお見掛けしていたのですが、映画出演は初めてとのこと。
速水への尊敬と嫉妬の入り混じった演技はお見事でした!

STAFF
  • 監督・脚本 : 吉田大八 (その他の作品)
  • 脚本 : 楠野一郎 (その他の作品)
  • 撮影 : 町田博
  • 照明 : 渡邊孝一
  • 美術 : 富田麻友美
  • 録音 : 鶴巻仁
  • 整音 : 矢野正人
  • 編集 : 小池義幸
  • 装飾 : 山川邦彦
  • 音楽 : LITE
  • 原作 : 塩田武士『騙し絵の牙』

監督は吉田大八さん。脚本は吉田監督楠野一郎さんの共同執筆です。
大泉洋さんをイメージして作られたキャラクターだからといって、大泉洋さんそのものを速水に取り入れたわけではなかったのが流石でした。
バラエティ番組などで見る、「大泉洋像」がほとんど見られなかったことで、映画そのものに没入できると共に「人たらし」などの表面的なイメージは残っており、キャラクターがとても理解しやすかったです!

登場人物

速水輝

カルチャー誌「トリニティ」の編集長。やりたいことに対しては手段を問わず突き進む。上司・部下・大物作家・人気モデルなど、誰でも巻き込み行動できる「天性の人たらし」。

高野恵

薫風社に努める編集者。「小説薫風」から「トリニティ」に異動する。文学のためであれば物怖じせず、発言・行動ができる。

東松龍司

薫風社・新社長。売上に重きを置き、会社の大幅な改革を目論む。

宮藤和生

薫風社・常務。伝統に重きを置いている。前社長の息子である伊庭惟高をで東松を排除を目論む。

江波百合子

「小説薫風」の編集長。100年の歴史をもつ「小説薫風」の伝統と品格を大事にしており、それをないがしろにする速水を敵視している。

伊庭惟高

薫風社前社長・伊庭喜之助の息子。東松が社長に就任後、NY支店に異動になる。

二階堂大作

大御所作家。「小説薫風」でも長きに渡り作品を発表しており、伝統を軽んじる東松や速水の行動には懐疑的。

城島咲

ファッションモデル。過去にはミリタリー関連の同人作家をしていたことがある。

矢代聖

「小説薫風」の新人賞に応募した新人作家。作家として高い実力と、甘いルックスを持ち合わせる。

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『騙し絵の牙』 ネタバレ感想

速水が描くストーリー

とにかく速水の優秀さが際立つ物語でしたね。
・廃刊すんぜんの雑誌「トリニティ」の売上を伸ばす手腕。
・敵対していた大御所作家から人気ファッションモデルまでも堕とす口の上手さ。
・矢代聖の正体に気が付く頭脳。
・城島咲のスキャンダルをチャンスと捉える着眼点。

東松宮藤の社内政争も、決着がついてみればほとんどは速水が用意したストーリーの上!
雑誌「トリニティ」を舞台に速水の優秀さがこれでもかと作中で丁寧に描かれていたからこそ、全てが速水の手のひらの上であったという結果を違和感なく受け入れることが出来ました。

東松派として宮藤を退陣に追い込みつつ、裏では東松も引きずり落とす策略を練っていた速水のすまし顔の憎らしさったら…。

速水自身も「根がフリー」と言っている通り、主人公である彼が一番利己的に動いており、会社を使って遊んでいるように見える姿はまるで悪役のようでした。陽気な性格だからこそ、悪役には映りませんでしたけどね。

常に速水の優位が崩れず余裕をもった態度をしていたからこそ、最後の最後に部下であった高野にしてやられ感情的にコーヒーを叩きつけていたシーンにはスカッとしました!

文学を愛し行動を続けた高野

登場人物のほとんどは会社のために行動していましたが、高野は一貫して文学のために動いていましたね。神座の居場所特定などは変態の域でした…(笑)

パーティーの場で大御所・二階堂にダメ出しをしたり、偽矢代に対し至る所でエンピツをいれるために接触を図ったりと愛するが故に周りが見えていないことも多々ありましたが、「会社の品格 > 新人作家」とする小説薫風の方向性に納得を示さなかったりと、一番文学界のことを考え続けていた彼女だからこそ、最後の独断勝利には納得がいくものでした。

薫風社のために闘う者達

100年の伝統と文化を重んじてるが故に、軽率な行動をとる速水や伝統をないがしろにした行動をする東松が許せず、古き良き「薫風社」を守ろうとした宮藤。

伝統だという理由で赤字を出すことは許さず、5年前に自信が考えた「プロジェクトKIBA」で「薫風社」の改革を進める東松。

100年の伝統の重圧に耐えながら、「小説薫風」の編集長を務めあげた江波。

「トリニティ」を押し上げた速水を尊敬しつつも、「トリニティ」を守るために速水を裏切った柴崎。

速水が主人公であったがために彼らは政敵として描かれていましたが、単純な悪役ではありませんでした。利己的に動いているものはおらず、それぞれが会社のために一番だと信じる道を進んでいるのが伝わってきたからこそ、とても深く魅力的なキャラクターになっており、視点を変えればそれぞれが主人公として話が作れるのではと感じました。

この魅力あふれる様々な登場人物達こそがこの映画の最大の面白さだと思います!

(コラム)鉛筆を入れる とは?

作中に何度か出てくる「鉛筆を入れる」という台詞。

意味としては、作家に対する内容の確認や疑問点の伝達になります。
もちろん修正依頼も含みますが、「鉛筆を入れる」の場合、修正するかは作家に委ねられるようです。
「鉛筆」という単語が使われている理由は、不要になった指摘や疑問点の質問などを、消しゴムで消せるようにとのことらしいです。

類似する言葉として「朱入れ」があります。いわゆる赤ペンですね。こちらも修正の際に使われます。

評価

評価: 5.0  最高!万人にオススメ!!
評価軸

☆5 最高!万人にオススメ!!
☆4 面白かった!オススメできる
☆3 満足。
☆2 微妙…。
☆1 好みではない

登場人物もしっかり深堀されており、飽きもとくにくることがない素晴らしい作品でした!
誰でも楽しむことができる作品だと思います!

最後に

物語のラストに「非AのKIBA」を書店が独占販売していましたが、実際にやったら上手くいかないというか色々問題おきそうですね。
売れない可能性もあり、売れるのであれば転売が横行しそう…

「アフタースクール」みたいな視聴者を完全に騙すタイプのどんでん返しを期待しているとガッカリするかもしれませんが、そういった作品の場合「どんでん返しあるよ」みたいな宣伝をしないと思うので期待外れだったという方は少ないのではないでしょうか。

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