映画『すばらしき世界』 ネタバレ感想 十犯六入に元犯罪者が現代社会に順応できるのか?

こんにちは。サンチョです。

イオンシネマの映画観放題キャンペーンと公開日がちょうど良く被ったので、キャンペーンを使って初日に映画を観てきました。

劇場に何度か足を運び、宣伝を見る度にこの映画を観るのを楽しみにしていました。西川美和監督の作品を観るのはこの作品が初めてなので、他の作品と比較した記事を書くことが出来ない点はご了承下さい。

この記事は『すばらしき世界』のネタバレが含まれます。
未鑑賞の方はお気をつけ下さい。

『すばらしき世界』 基本情報

原案は1990年に発売された佐木隆三さんのノンフィクション小説『身分帳』。
モデルである田村明義さんから送付されてきた身分帳を題材にした作品です。

西川監督のもと、時代設定が現代に変更され、13年の刑期を終えた主人公・三上の人生を描く。

あらすじ

YouTube ワーナーブラザーズ公式チャンネルより

 冬の旭川刑務所でひとりの受刑者が刑期を終えた。  刑務官に見送られてバスに乗ったその男、三上正夫(役所広司)は上京し、身元引受人の弁護士、庄司(橋爪功)とその妻、敦子(梶芽衣子)に迎えられる。  その頃、テレビの制作会社を辞めたばかりで小説家を志す青年、津乃田(仲野太賀)のもとに、やり手のTVプロデューサー、吉澤(長澤まさみ)から仕事の依頼が届いていた。取材対象は三上。吉澤は前科者の三上が心を入れ替えて社会に復帰し、生き別れた母親と涙ながらに再会するというストーリーを思い描き、感動のドキュメンタリー番組に仕立てたいと考えていた。生活が苦しい津乃田はその依頼を請け負う。しかし、この取材には大きな問題があった。  三上はまぎれもない“元殺人犯”なのだ。津乃田は表紙に“身分帳”と書かれたノートに目を通した。身分帳とは、刑務所の受刑者の経歴を事細かに記した個人台帳のようなもの。三上が自分の身分帳を書き写したそのノートには、彼の生い立ちや犯罪歴などが几帳面な文字でびっしりと綴られていた。人生の大半を刑務所で過ごしてきた三上の壮絶な過去に、津乃田は嫌な寒気を覚えた。  後日、津乃田は三上のもとへと訪れる。戦々恐々としていた津乃田だったのだが、元殺人犯らしからぬ人懐こい笑みを浮かべる三上に温かく迎え入れられたことに戸惑いながらも、取材依頼を打診する。三上は取材を受ける代わりに、人捜しの番組で消息不明の母親を見つけてもらうことを望んでいた。  下町のおんぼろアパートの2階角部屋で、今度こそカタギになると胸に誓った三上の新生活がスタートした。ところが職探しはままならず、ケースワーカーの井口(北村有起哉)や津乃田の助言を受けた三上は、運転手になろうと思い立つ。しかし、服役中に失効した免許証をゼロから取り直さなくてはならないと女性警察官からすげなく告げられ、激高して声を荒げてしまう。  さらにスーパーマーケットへ買い出しに出かけた三上は、店長の松本(六角精児)から万引きの疑いをかけられ、またも怒りの感情を制御できない悪癖が頭をもたげる。ただ、三上の人間味にもほのかに気付いた松本は一転して、車の免許を取れば仕事を紹介すると三上の背中を押す。やる気満々で教習所に通い始める三上だったが、その運転ぶりは指導教官が呆れるほど荒っぽいものだった。  その夜、津乃田と吉澤が三上を焼き肉屋へ連れ出す。教習所に通い続ける金もないと嘆く三上に、吉澤が番組の意義を説く。「三上さんが壁にぶつかったり、トラップにかかりながらも更生していく姿を全国放送で流したら、視聴者には新鮮な発見や感動があると思うんです。社会のレールから外れた人が、今ほど生きづらい世の中はないから」。その帰り道、衝撃的な事件が起こる・・・。

引用:映画『すばらしき世界』オフィシャルサイトより

原案 – 佐木隆三『身分帳』

STAFF/CAST

CAST
  • 三上正夫: 役所広司 (その他の出演作品)
  • 津乃田龍太郎 : 仲野太賀
  • 庄司勉 : 橋爪功
  • 庄司敦子 : 梶芽衣子
  • 松本良介 : 六角精児
  • 井口久俊 : 北村有起哉
  • 下稲葉明雅 : 白竜
  • 下稲葉マス子 : キムラ緑子
  • 吉澤遥 : 長澤まさみ
  • 西尾久美子 : 安田成美

主演は役所広司さん。日本を代表する俳優のお一人ですね。
年齢など関係ないと言わんばかりの迫力の凄さ。60を超えたご老体が一人で若者のチンピラ二人を倒すなど本来であれば考えられませんが、納得のいく迫力でした!

STAFF
  • 原案 : 佐木隆三『身分帳』
  • 監督・脚本 : 西川美和
  • 撮影 : 笠松則通
  • 照明 : 宗賢次郎
  • 音響 : 白取貢
  • 美術 : 三ツ松けいこ
  • 編集 : 宮島竜治
  • 音楽 : 林正樹
  • 衣装デザイン : 小川久美子
  • ヘアメイク : 酒井夢月
  • 音響効果 : 北田雅也
  • 助監督 : 中里洋一

登場人物

三上正夫

13年の刑期を終えた極道者の元殺人犯。母親を探してもらうため身分帳を吉澤に送る

津乃田龍太郎

吉澤に依頼され三上を取材するTVディレクター

庄司勉

三上の身元引受人の弁護士

庄司敦子

庄司勉の妻

松本良介

三上が通うスーパーの店長

井口久俊

福祉事務所で働くケースワーカー

下稲葉明雅

かつての三上の兄弟分。下稲葉組組長。

下稲葉マス子

下稲葉明雅の妻

吉澤遥

三上のドキュメンタリーを撮ろうとするTVプロデューサー

西尾久美子

三上正夫の元妻

『すばらしき世界』 ネタバレ感想

十犯六入

三上の特徴の一つは『十犯六入』であること。前科十犯、刑務所への入所回数は計六回と意味です。

一度過ちを起こした者がマジメに働いていても、周りから白い目で見られてりして、なかなか社会に馴染むことが出来ない。このようなキャラクターであれば、映画やドラマをよく見る方であれば主役だったり1話限りのゲストキャラだったりで何度も見たことがあります。
宣伝のPVを見ていたときは、そのようなテンプレの元犯罪者の話なのかなと思っていました。

しかし実際に映画を観てみれば、本当に出所したばかりなのと疑いたくなるような我慢の効かない男でした。まさか出所間際に看守に噛みつくとは…。13年収監されても自分の言い分を曲げない所に、三上正夫というキャラクターが表現されていたと思います。

『十犯六入』という経歴からして物語っていますが、三上は罪を犯すことに対しての認識が甘いです。
津乃田が初めてインタビューに来た時の過去の犯罪をまるで『武勇伝』にように無邪気に語っていたシーンが私の中で凄く印象的です。もちろん反省もしているんでしょうが、自分が正しいと信じたことに対しては犯罪であろうと実行してしまうし、人に語ることが出来てしまう三上正夫が他の元犯罪者のキャラクターとは違うのが良く分かりました。

夜中に大騒ぎしていた近隣住民への対応や、カツアゲをしていたチンピラへの対応から、理不尽に罪を犯すことはなくても己の正義感やプライドのためなら平気で人を殴ることのできる、よく言えばこの映画の広告でも使われているような『まっすぐな男』、悪く言えば『後先を考えない男』でした。

出所したばかりの男が全くおとなしくすることなく行動する姿は、設定としても珍しいキャラクターで、新鮮な気持ちで見ることできました。まあもっと上手く生きることはできないものかとイライラもしますがね。

社会と我慢

三上が社会に馴染むために圧倒的に足りていなかったのは「我慢をすること」でしたね。
迷惑を掛ける輩には勿論のこと、三上のことを思っての言葉に対しても見下されていると判断すれば怒鳴り散らす、すでに社会に出ている人ほど共感は難しいキャラクターだったと思います。少なくとも私は、もうちょっと上手く立ち回れるでしょとか、その発言や行動を他人がどう思うかもうちょっと考えようよとかそんなこと思いながら観ていました。

作中でも言及されてましたが、社会で生きていくためにはある程度の我慢は必要不可欠です。
母親探しの件で松本店長に怒鳴り散らした三上と、怒鳴られても今日は虫の居所が悪かったんだねと三上をなだめた松本店長に社会経験の差が対比されていたと思います。

社会に出れば我慢の連続です。そうして人は空気の読み方や自分の感情の殺し方を学ぶのだと思います。中盤までの三上は、「我慢は効かない男」でしたがその代わり「自分の信念に真っすぐな男」でした。だからこそ曲がったことに対してはハッキリと物を申せる人物でそこが中盤までの三上の魅力でした。最後、社会に溶け込むために「我慢」を覚えた三上は、いじめられている同僚を助けずに見て見ぬふりをしました。
あのシーンに現代社会が詰まっており、三上は現代社会に順応し始めたと同時に、個性と魅力を失ったなと感じました。

吉澤プロデューサー

吉澤プロデューサーは出番こそ少なかったですが、一番現代社会を正しく見ている魅力的なキャラクターでした。
特に印象的だったのはチンピラ二人をボコボコにする三上から逃げ出した津乃田に対し「仕事を続行することも三上も止めることもせず、ただ逃げ出すお前みたいなヤツが一番何もなさない」と叱責するシーン。
私も津乃田と同じ選択をするな~と思いながら見ていたのでめっちゃグサリと刺さりましたね~。津乃田は現代人代表のようなキャラだと思います。面倒ごとは見ていたいけど当事者になるくらいなら目を背けたい。だからこそ少し感情移入していたので私が怒られている気分になりました…。

社会に順応した三上

劇中で「弱いものへの暴行」にあたる現場が2回描写されていました。
「まっすぐ行動していた」頃の三上は、弱いものを助け、強いものをボコボコに。
「我慢を覚えた」三上は、弱いものを助けず、強いものになびきました。

おそらく倫理的にも正しき行動は、「弱い者を助け、強い者から逃げる」なのでしょう。作中のキャラクターだと、吉澤プロデューサーあたりはこの行動になる気がしています。

ただ現代社会において、実際には後者の行動になる人が多いのではないでしょうか。私はおそらく後者です。

後者のイジメられている人物を放っておいたシーンは、三上が現代社会を学び暴力を振るわなくなったとも取れるし、社会に毒され傍観者になってしまったとも取れるとても絶妙なシーンだったと思います。

評価

評価: 4.0  面白かった!オススメできる
評価軸

☆5 最高!万人にオススメ!!
☆4 面白かった!オススメできる
☆3 満足。
☆2 微妙…。
☆1 好みではない

最後に

精神が幼いのであまり現代社会を風刺するような作品は久しぶりに見ました。年齢を重ね社会にもまれてから見ると色々と刺さる描写が多いですね。
西川監督の作品も順番に観ていこうと思います。

コメント

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